朝、コーヒーを淹れる前に、器具を選ぶだけで30分も使っていた時期がありました。この豆にはどのグラインダーを合わせよう。挽き目はどうしよう。今日は V60 にするか、それとも別のドリッパーか。いざお湯を注ぎ始める頃には、少し雑に淹れてしまっていました。もう出かける時間が近く、その前の選択で気力も使ってしまっていたのです。
以前、道具を買い足していたのは、コーヒーをもっとおいしく淹れたかったからです。ところが、器具が増えるほど、飲むことをあまり楽しめなくなっていました。ずっと調べて、試しているのに、どうして最初の頃のあの楽しみが戻ってこないのでしょう。
大きくて高いものほどよいと、本気で信じていた頃
コーヒーを飲み始めた頃は、お店で気になる豆を見つけ、いい香りにひかれて買って帰り、淹れてみる。好みの一杯になると、また少し試したくなりました。楽しみは単純で、次の一袋はどんな味がするだろう、というものでした。
そこから器具についても調べ始めました。グラインダーを替えたり、ドリッパーを試したりして、同じ豆にほかにどんな味わいがあるかを知りたくなりました。調べること自体、確かに楽しいものです。機械が大きく、値段も高ければ、もっとおいしいコーヒーが淹れられるはずだと、つい信じてしまいました。
私たちも、本当にそう考えていたのです。
器具が増えると、淹れるたびに選べる組み合わせも増えます。でも、選択肢が増えても、飲む楽しみは増えませんでした。あるところまでは来た気がするのに、もう一つ買ってもまだ少し足りない。そうして、また次を試したくなっていました。
朝のあの30分を振り返ると、コーヒーに向けたかった気持ちのほとんどを、どう淹れるかを決めるために使っていました。道具も抽出条件も選び終えたのに、最後に飲むことがおろそかになっていたのです。

残ったのは、いつもよく使っていた道具
その後、私たちは使用頻度の低い器具を少しずつ人に譲りました。残したのは、よく使う V60 と Kalita 155、使い慣れたグラインダーとコーヒーカップです。
器具を減らしてから、コーヒーを飲み始めた頃の喜びが、少しずつ戻ってきたように感じました。淹れる前にあれこれ考えなくて済むようになったからなのかは、はっきりしません。少なくとも当時の日常では、この変化を続けてみたいと思えました。
ただ、ここまで読んだからといって、家にある器具を急いで売る必要はありません。たまにしか使わない道具が、週末に一番楽しみにしている淹れ方を支えているかもしれません。まずは普段あまり使わないものをいくつかしまってみて、また取り出したくなるかを確かめてみてください。恋しくなるのは、その道具で淹れた味でしょうか。それとも、使っている時間でしょうか。
その答えは、値段で残すものを決めるより、ずっと確かな手がかりになります。

次の一袋が楽しみになった
もう一つ変わったのは、予算です。
私たちはもともと、毎月のコーヒー予算を決めていました。器具に多く使えば、豆に回せる分は少なくなります。道具を買う回数が減ってからは、その一部を豆に回し、それまであまり飲んでいなかった精製方法の豆を試すようになりました。
まだ飲んだことがなく、しかも好みに合うコーヒーがこんなにあるのかと、少し驚きました。手元の器具は使い慣れたままでも、楽しみにすることが変わりました。今度は豆を替えたら、何が違うだろう。コーヒーを飲み始めた頃のあの気持ちが、また少し戻ってきました。
使いやすい一式がすでに揃っている人に、今、私たちがお伝えしたいのもこのことです。次の予算は、一部を豆に残してみてください。今の道具で好きな味を淹れられていて、最近少し新鮮さが足りないと感じるだけなら、すぐに次のグラインダーを調べ始めなくてもよいかもしれません。
豆を探すとき、初めから高価なものばかり候補に挙げる必要はありません。次にお店で好みのハンドドリップコーヒーに出会ったら、その豆を買えるか尋ね、淹れ方のアドバイスも聞いてみてください。普段 IG や Threads の投稿を見るときも、誰の好みが自分に近いかに目を向けると、試したい豆を探せます。人気の豆を追うより、自分がどんな味を好きかを知るほうが役立ちます。

では、次の器具は買うべきでしょうか?
最近、似たように感じているなら、まずは使い慣れた一式と、以前に好みの味に淹れられた手持ちの豆とレシピで、何度か続けて淹れてみてください。ひとまず道具一式を替えずに、どの段階でもどかしくなるかに目を向けてみます。
コーヒーの味が好みに合わないのでしょうか。それとも、淹れる前に選ぶ時間が長すぎるのでしょうか。もしかすると、一番気が進まないのは淹れた後の片づけかもしれません。具体的に何が不便なのかをつかむと、次に何を変えるべきかが見えてきます。
味が好みに合わないときは、まず焙煎店にレシピのアドバイスを聞き、挽き目か、コーヒー粉とお湯の比率のどちらか一つを調整して、ほかはできるだけそのままにします。挽き目から試すなら、実際に淹れた結果に合わせて挽き目を調整する方法も読んでみてください。コーヒーの味はすでに好きで、準備のときに迷いすぎるだけなら、その何回かは使い慣れた方法で淹れ、選択肢を増やすのを急がずに試してみます。
次の道具に、日常のどんな困りごとを解決してほしいのでしょう。その必要を言葉にできると、何を比べればよいかが見えてきます。
必要なことがはっきりすると、器具はずっと選びやすくなる
たとえば、毎日手挽きするのが大変で、電動グラインダーに替えたい。あるいは、以前は自分の分だけ淹れていたけれど、今はもう一人と飲むことが多い。こうした場合は、何を比べたいかがわかっています。大きさや値段だけを見るのでなく、操作方法や淹れられる量、手入れの仕方を確かめられます。
カップの中の口当たりを変えたいときも、もう少し具体的に考えてみるとよいでしょう。たとえば、中深煎りを V60 で淹れて薄く感じるなら、コーヒー液そのものが薄いのか、それとももっと厚みのある口当たりが欲しいのかを先に分けてから、別のドリッパーを試すか決めてみてください。この場合は、V60 と Kalita 155 を例にした判断方法を別の記事で紹介しています。実際にその悩みに出会ったときに、続けて読んでみてください。
もちろん、器具を集めたり比べたりすること自体も、コーヒーの楽しみの一つです。私たちは、今も道具が好きです。
今夜のうちに、明日使う一式を選んでおいてもよいでしょう。朝は使い慣れた方法で淹れ、迷わずに済んだ分の時間を、コーヒーを飲むことに使ってみてください。解決したい不便が実際に出てきたら、そのときに次の道具を選べます。











