Sharing Cupの素地と窯内への配置を並べた製作写真。表紙タイトル:曲線を カップにする

薄い縁はどう作る?Sharing Cup の曲線を、繰り返し作れるカップにするまでの選択

Sharing Cup を作っていたとき、友人から、なぜろくろで直接作らないのかと聞かれたことがあります。

もっともな質問です。手作りの陶磁器と聞くと、回転する台の上で両手で土を引き上げ、カップが少しずつ形になる様子を思い浮かべる方は多いでしょう。一方、Sharing Cup は泥漿を型に流し込む鋳込みを選び、その後に素地の仕上げ、乾燥、焼成を行っています。

理由は、このシリーズの出発点にあります。私たちは、ひと口ずつ味わうことに合う輪郭を探していました。胴が内側へ絞られ、飲み口に向かって再び広がる形です。気に入った方向を見つけた後は、同じ製作分のカップの曲線や厚さも、できるだけそろえたいと考えました。型があれば、何度も立ち返れる形の出発点を持てます。

ただ、同じ型を使えば、同じ完成品が自動的にできるわけではありません。手間のかかる部分は、成形した後も続きます。

外へ広げる前に、素地をどう型から出すかを考えます

流れるような輪郭は、見るだけなら、内側へ絞られてから外へ広がる1本の曲線です。製作に移すと、成形後の素地をどの方向へ型から取り出すのか、という実際的な問いが出てきます。

ある部分が出口より広ければ、ひとつの方向へ引き出すだけでは取り出せません。曲線と取り出し方は、一緒に考える必要があります。すべての比率を決めてから、最後に外側を覆うものとして型を付け足すわけにはいかないのです。

店主が提供した Sharing Cup S、M、L、Alpha、Beta の5種類の輪郭を示す概念図。
元の図の5種類の輪郭を残し、外形と内部構造を見分けられるようにしています。工学的な測定図ではなく、図中の大きさから実際の寸法を比較することはできません。

左から:S Size、M Size、L Size、Alpha Size、Beta Size。

これも、デジタルで探索した後に実物を作る理由です。画面の中では理想の形を保てますが、素地には取り出し、支え、その後の仕上げという工程が待っています。適した外形ができたところが、出発点です。実際に作れる道筋も必要になります。

だからといって、ろくろ成形がよくないと考えているわけではありません。今回の工法選びで重視したのは、選んだ輪郭を繰り返し作るときに、出発点をよりそろえられることです。1点ごとの変化を求めるなら、判断も変わります。

泥漿を流し込んで、なぜ中が空いたカップになるのでしょうか

一般的な石膏型による鋳込みで鍵になるのは、型が泥漿の水分の一部を吸い取ることです。型の内壁に近い土が少しずつ層を作り、適した状態になったら、まだ流動する余分な泥漿を流し出します。残った部分はさらに硬さを増し、少し収縮すると型から取り出しやすくなります。Digitalfire の鋳込みの説明を見る

こう考えると、鋳込みの時間が壁の厚さに関係する理由がわかります。ただし、どこでも通用する「何分」という数値があるわけではありません。材料の状態、型の吸水状態、層ができる速さを合わせる必要があります。日々の製作でも、タイマーだけを見るのではなく、素地そのものを見ます。

Sharing Cup の製作写真を並べています。左は釉薬をかける前の素地を手に持つ様子、右は電気窯の中の素地です。
素地から窯の中に並ぶまでの、Sharing Cup シリーズの実際の製作記録です。写真は製作の場面を示すもので、すべてのカップが同じ寸法であることを証明するものではありません。

縁の厚みの存在感を抑えたいからといって、時間を短くし続ければよいわけでもありません。薄い壁でも、型からの取り出しや仕上げに耐える必要があります。成形時の材料を少し減らした分、その後は十分な硬さがあるか、作業中に形を保てるかに、いっそう注意が必要です。

こうした兼ね合いの中で、「薄い」は商品の形容から、毎回の製作で向き合う課題に変わります。

ほかの実践例からも、形と工法を一緒に見直す必要がわかります

Digitalfire は、器壁が薄く、上部が開いたボウルを記録するとともに、3D プリントした部品を使って型の位置合わせや泥漿の排出口を補助する実践例も紹介しています。原著者の記録を見る

こうした事例が Sharing Cup にそのまま使える製法を与えてくれるわけではありませんが、製作の細部にもツールを活用できることがわかります。私たちが読み取ったヒントは、形と作り方を一緒に考えられるということです。ひとつの部分を変えたら、それが次の工程にどう影響するかも見直します。

私たちの難しさも、「比率を正しく描くこと」だけには収まりませんでした。曲線を土で形にしようとすると、考えることが増えます。1個の試作品を作ることと、一定数を継続して作ることの間に、違いが見えてきます。

型から出したときは無事でも、後からひびが入るのはなぜでしょうか

土の素地は乾燥すると収縮します。薄い部分が先に乾いて硬くなり、厚い部分にはまだ水分が多く残っていれば、各部が同じようには収縮しないことがあります。土が硬くなるにつれ、それまで変形できていた部分も、こうした引っ張り合いに耐えられなくなる可能性があります。

Digitalfire の円板を使った乾燥試験では、中央と周囲が意図的に異なる速さで乾くようにして、ひびがどう生じるかを観察しています。後になって現れるひびもありますが、その原因となる水分の差は、すでに前の段階で生じています。乾燥収縮と実践例を読む

カップ作りに当てはめると、ひびを見つけたときに、最後の操作だけを振り返っても足りない理由がわかります。飲み口、胴、底の厚さ、空気への触れ方、それまでの乾燥のさせ方も、見直す手がかりになります。これは一般的な陶芸の原理です。個々の実際の原因は、その素地と当時の環境を見て判断する必要があります。

開いた電気窯の中に、複数の Coffee Stage Sharing Cup の素地が並んでいます。
Sharing Cup シリーズの窯の中の素地の記録です。共通の形を繰り返し製作する段階に進んでも、ひとつひとつの実物の状態を見ていく必要があります。

ですから、鋳込みを使っても、手仕事による判断がなくなるわけではありません。いつ取り出すか、どの状態まで仕上げるか、どう乾燥を待つかは、求める形を最後まで残せるかに関わります。その後には素焼きと釉薬をかけての本焼きもあります。工程の名前は短くても、各段階で素地の状態は異なります。

型は出発点の差を抑える助けになりますが、材料や手作業による変化は残ります。また、手作りだからといって、ひびを許容する理由にはできません。釉色や表情の自然な違いと、使用に影響する問題は別のことです。

手間がかかっても、薄い縁を選ぶのはなぜでしょうか

出発点に戻れば、それほど複雑な話ではありません。コーヒーが唇に届くときに、縁の存在感を少なくしたい。胴の曲線が味わう動作に合い、ひと口ずつの飲用につながりを持たせたい。その使い方を目指すからこそ、成形とその後の製作に、より手間をかけています。

工房の棚に、青緑の釉色の Coffee Stage Sharing Cup の完成品が複数並んでいます。
Sharing Cup シリーズの完成品を撮影した写真です。デザインが日常で使う実物になった姿を示すもので、シミュレーションの出力や初期の試作品の写真ではありません。

ただ、薄い縁が、誰にとってもカップ選びの最優先というわけではありません。持ち手が必要な方、一度にどれだけコーヒーを注げるかを重視する方、食器洗い機に任せたい方もいます。口に触れる細部を好むことも、カップの手入れに手間をかけたいかどうかも、実際の選択の一部です。

次にカップを手に取ったら、まず唇に触れる感覚に注目し、胴の内側と外側の線も見てみてください。私たちにとって、この線はふたつの仕事につながっています。飲むときにどんな感覚を得たいかを考えることと、それを実物にし、さらに次の1個を作ることです。

ここからカップを選ぶなら、Sharing Cup の5種類の実際の用途を比べて、ふだん入れる量や飲み方から方向を探せます。口に入るときの感覚を先に確かめたい方は、胴の曲線とコーヒーの最初のひと口を読み返し、今あるカップで一度試してみてください。

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